2026.02.10
抄読会レポート:“かぜ”に対する経鼻スプレーと行動介入の効果
昨今、薬剤耐性菌への懸念から、抗菌薬の適正使用は世界的な課題となっています。特にプライマリケアでは、呼吸器感染症に対する不要な抗菌薬処方を減らすことが重要です。もし、呼吸器感染症を予防したり、症状の持続期間を短縮できる低コストの介入があれば、抗菌薬使用の抑制につながり、公衆衛生上の意義も大きくなります。先行研究ではさまざまな経鼻スプレーや、ストレス管理を促す行動介入が一定の効果を示す可能性が指摘されてきました。
今回の抄読会では、2種類の経鼻スプレー(ジェル状スプレー、生理食塩水スプレー)およびストレス管理を促すオンライン行動介入プログラムが、通常診療と比較して急性呼吸器感染症(かぜ症状)に対して有効かを検討した英国のランダム化比較試験を取り上げました。主要評価項目であるかぜ症状の持続期間は、いずれの経鼻スプレー群でも通常ケアより有意に短縮していました。また、副次評価項目として検討された抗菌薬の使用は、2種類のスプレー群と行動介入群のいずれでも減少していました。
抄読会では、プラセボ対照が難しい研究デザインである点、評価が自己申告に基づく点、病原体が特定されていない点などの限界について議論がありました。それでも、今回の介入はいずれも医療機関を受診しなくても市販の鼻スプレーを購入すれば実施できる点が魅力であり、将来的に公衆衛生的な対策として活用できる可能性が示唆されました。
今回取り上げた論文は下記のとおりです。
Nasal sprays and behavioural interventions compared with usual care for acute respiratory illness in primary care: a randomised, controlled, open-label, parallel-group trial.
Lancet Respir Med. 2024;12(8):619-632.
※ 感染症学講座では、専門人材の育成と学生教育を目的として、感染症分野の注目論文を取り上げる抄読会を定期的に開催しています。本記事は感染症学講座における抄読会の活動報告を目的として作成されたものであり、特定の疾患に対する診断・治療を推奨または否定するものではありません。内容の正確性には十分配慮しておりますが、詳細については必ず元の論文をご確認ください。なお、実際の医療現場での適応に関しては、医療専門職の判断に基づいてご対応ください。