2025.12.25
抄読会レポート:重症市中肺炎に対する早期のヒドロコルチゾン投与の有効性
市中肺炎は世界各国における主要な死因のひとつであり、人工呼吸器管理を受けた重症患者では死亡率が30% に達するとも報告されています。肺だけでなく全身に影響する強い炎症をコントロールする目的で、これまでにもグルココルチコイドの有用性が複数のランダム化比較試験で検証されてきましたが、死亡率を改善するかどうかについては明確な結論が得られていませんでした。
今回の抄読会では、重症の市中肺炎で集中治療室(ICU)に入室した成人を対象として、早期のグルココルチコイド(今回の試験ではヒドロコルチゾン)投与が28 日死亡率を低下させるかを検討したプラセボ対照のランダム化比較試験を取り上げました。結果として、28 日死亡率はヒドロコルチゾン群 6.2%であり、プラセボ群 11.9% と比較して有意に低下しました。また、当初人工呼吸管理を受けていなかった患者における挿管率も、ヒドロコルチゾン群で低い傾向が示されました。なお、入院後の院内感染症や消化管出血の発生率は同等だったものの、ヒドロコルチゾン群のほうがインスリンの必要量が多かったことも報告されています。
従来、グルココルチコイドの持つ免疫抑制作用への懸念から、感染症治療との相性はあまり良くないと考えられてきました。しかし、今回の論文に取り上げられている重症の市中肺炎のほかにも、肺炎球菌性髄膜炎や酸素需要を伴うCOVID-19など、過剰な炎症が病態に関与する疾患では、グルココルチコイドの有効性が示されています。今後の感染症治療では、抗菌薬や抗ウイルス薬の選択に加えて、炎症制御を含む多面的なアプローチがますます重要になると考えられます。
今回取り上げた論文は下記のとおりです。
Hydrocortisone in Severe Community-Acquired Pneumonia.
N Engl J Med. 2023;388(21):1931-1941.
※ 感染症学講座では、専門人材の育成と学生教育を目的として、感染症分野の注目論文を取り上げる抄読会を定期的に開催しています。本記事は感染症学講座における抄読会の活動報告を目的として作成されたものであり、特定の疾患に対する診断・治療を推奨または否定するものではありません。内容の正確性には十分配慮しておりますが、詳細については必ず元の論文をご確認ください。なお、実際の医療現場での適応に関しては、医療専門職の判断に基づいてご対応ください。