2025.12.02
抄読会レポート:早期梅毒治療におけるベンザチンペニシリンGの単回投与と3回投与の比較
近年、日本のみならず世界的にも梅毒の患者数が急増しており、早期診断と治療の重要性が再認識されています。梅毒に対する標準治療であるベンザチンペニシリンGは、感染後の早期(おおむね1年以内)であれば 240万単位筋注1回が推奨されていますが、過去にはHIV陽性者に対して治療失敗や再発の懸念から週1回×3回投与を選択するという意見がありました。
今回取り上げた論文では、ランダム化比較試験により早期梅毒患者に対するベンザチンペニシリンGの単回投与と3回投与の治療成績を比較しています。その結果、血清学的治癒率は両群で同等であり、HIV患者でも同様の結果だったことが報告されました。今回の研究により、早期梅毒に対する現行の治療方針のエビデンスが補強されたことが確認できたと思います。抄読会では、昨今の抗菌薬の供給不安定にも触れながら、必要十分な治療を提供していくことの重要性が議論されました。
今回取り上げた論文は下記のとおりです。
One Dose versus Three Doses of Benzathine Penicillin G in Early Syphilis.
N Engl J Med. 2025;393(9):869-878.
※ 感染症学講座では、専門人材の育成と学生教育を目的として、感染症分野の注目論文を取り上げる抄読会を定期的に開催しています。本記事は感染症学講座における抄読会の活動報告を目的として作成されたものであり、特定の疾患に対する診断・治療を推奨または否定するものではありません。内容の正確性には十分配慮しておりますが、詳細については必ず元の論文をご確認ください。なお、実際の医療現場での適応に関しては、医療専門職の判断に基づいてご対応ください。