活動報告

Activity

2025.12.03

抄読会レポート:ESBLに対するempiric therapyを考える ―PIPC/TAZ vs MEPM―

薬剤耐性菌対策の観点からカルバペネム系抗菌薬の使用をできるだけ避ける戦略が求められています。しかし、従来からESBL産生菌に対する確実な治療選択肢はカルバペネム系とされており、実際の臨床現場では「ESBL産生菌の可能性を否定できない」という文脈で、empiric therapyとしてカルバペネム系が選択されることがあります。一方、ピペラシリン・タゾバクタムはESBL産生菌の感受性検査では感性(S: susceptible)と判定されることがありますが、臨床的な有効性は不十分と考えられてきました。

 

今回の抄読会で取り上げた研究では、ESBL産生菌の菌血症に対して、empiric therapyにピペラシリン・タゾバクタムが使用された群と、カルバペネムが使用された群の30日死亡率が比較されました。その結果、ピペラシリン・タゾバクタム群の30日死亡率は8.4%であり、カルバペネム群(8.1%)に対して非劣性であることが示されました。

 

抄読会では、研究が行われたスウェーデンと日本のESBL産生菌の割合の違いなどについて言及されました。観察研究のため限界はあるものの、臨床現場におけるempiric therapyの抗菌薬選択において、「ESBL産生菌の可能性を否定できない」状況においてもピペラシリン・タゾバクタムの使用を後押しする根拠のひとつとなりそうです。

 

 

今回取り上げた論文は下記のとおりです。

Piperacillin/tazobactam versus carbapenems for 30-day mortality in patients with ESBL-producing Enterobacterales bloodstream infections: a retrospective, multicenter, non-inferiority, cohort study. 

Infection. 2025;53(5):1769-1777.

 

 感染症学講座では、専門人材の育成と学生教育を目的として、感染症分野の注目論文を取り上げる抄読会を定期的に開催しています。本記事は感染症学講座における抄読会の活動報告を目的として作成されたものであり、特定の疾患に対する診断・治療を推奨または否定するものではありません。内容の正確性には十分配慮しておりますが、詳細については必ず元の論文をご確認ください。なお、実際の医療現場での適応に関しては、医療専門職の判断に基づいてご対応ください。

 

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