2025.11.13
抄読会レポート:人工呼吸器管理開始時のセフトリアキソン単回投与はVAPを減らせるか?
人工呼吸器管理の際には、人工呼吸器関連肺炎(VAP)が重大な合併症の一つとして知られています。以前から口腔ケアや体位管理などによる予防が試みられていますが、さらなる補完的な予防が求められてきました。
今回取り上げたPROPHY-VAP試験では、急性脳損傷により人工呼吸器管理となった患者に対して、挿管後12時間以内にセフトリアキソン2gを単回投与することで、早期VAPを予防できるかが検討されています。その結果、早期VAPの発症率はプラセボ群32%に対しセフトリアキソン群14%と有意に低下し、安全性や耐性菌の増加についても大きな懸念は認められなかった、と報告しています。
実際にVAPを発症すると一定期間の抗菌薬投与が必要になりますが、この研究では人工呼吸器管理開始時に抗菌薬を単回投与することで、全体としての抗菌薬使用量を減らせる可能性が示されました。抄読会では、このような方法が今後の予防バンドルに含まれる可能性や、他の疾患・他の病態においても同様の研究が行われる可能性について、期待を寄せていました。
今回取り上げた論文はこちら
Ceftriaxone to prevent early ventilator-associated pneumonia in patients with acute brain injury: a multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled, assessor-masked superiority trial
Lancet Respir Med. 2024;12(5):375-385.
※ 感染症学講座では、専門人材の育成と学生教育を目的として、感染症分野の注目論文を取り上げる抄読会を定期的に開催しています。本記事は感染症学講座における抄読会の活動報告を目的として作成されたものであり、特定の疾患に対する診断・治療を推奨または否定するものではありません。内容の正確性には十分配慮しておりますが、詳細については必ず元の論文をご確認ください。なお、実際の医療現場での適応に関しては、医療専門職の判断に基づいてご対応ください。