活動報告

Activity

2025.09.09

抄読会レポート:好中球減少時のPseudomonas aeruginosa(緑膿菌)菌血症に対する抗菌薬短期投与の有効性

感染症学講座では、専門人材の育成と学生教育を目的として、感染症分野の注目論文を取り上げる抄読会を定期的に開催しています。今回はその一環として、以下の論文を取り上げました。

 

Is Short-Course Antibiotic Therapy Suitable for Pseudomonas aeruginosa Bloodstream Infections in Onco-hematology Patients With Febrile Neutropenia? Results of a Multi-institutional Analysis

 

Clin Infect Dis. 2024;78(3):518-525.

 

近年、抗菌薬の過剰使用による耐性菌の増加や副作用リスクを背景に、細菌感染症に対して治療期間を「必要最小限」にするという方針が国際的に受け入れられています。例えば免疫機能に問題がない患者に生じた、特に合併症のないグラム陰性桿菌菌血症に対しては7日間程度の短期治療が標準化されつつあります。

今回取り上げた論文では、好中球減少を伴う血液悪性腫瘍患者434名を対象に、P. aeruginosa(緑膿菌)菌血症に対する短期(7–11日)vs. 長期(12–21日)治療の臨床成績が比較されています。その結果、30日以内の死亡率や再発率に有意差はなく、短期治療群の方が平均3.3日早く退院できたと報告されています。ただし、再発や死亡に影響する因子としては、多剤耐性緑膿菌感染、肛門周囲炎、再発性/難治性血液悪性腫瘍の存在、好中球減少状態の遷延が挙げられており、抗菌薬の投与期間そのものよりも患者背景の方が重要である可能性が示唆されました。

感染症の治療期間を短縮する、という国際的な方向性がある中で、今回の論文は高度の免疫抑制患者においても短期治療が必ずしも不利ではない、ということを示す重要な知見だと思います。一方で今回の研究はあくまで観察研究であり、ランダム化比較試験による検証が今後の課題になると思います。それでも抗菌薬適正使用の観点から、治療選択の柔軟性を高める知見といえるでしょう。

 

 

 本記事は、感染症学講座における抄読会の活動報告を目的として作成されたものであり、特定の疾患に対する診断・治療を推奨または否定するものではありません。内容の正確性には十分配慮しておりますが、詳細については必ず元の論文をご確認ください。なお、実際の医療現場での適応に関しては、医療専門職の判断に基づいてご対応ください。

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